――…ああ、そうだ。
琉璃、此処に来たのは一応もう一つ目的があるんだ。
[ふと思い出したように口を開いて仕切りなおす。
留まりたがる本能と、退きを命じる理性の合間で、
肩に乗せた掌が肩の丸みを辿り緩やかな摩擦。
彼女に示唆するのは本堂へ続く道すがらに建てられた御札授与所。
名残惜しくも、肩から背を撫で下げ指を引くと、
彼女を誘い、御守りだの御札だのが並べられた軒下へ。
当然御籤も在るが、妹にとっては苦い記憶が蘇る代物だろうか。
兄はそんなことを欠片も気にせず、七百円と引き換えに授かるのは、淡い赤色、彼女の色。]
これなら、外しもしないだろう。
三つもつけたりしないから、大人しく貰っておけ。
[秋桜を模る愛らしい御守りを差し出し、一日遅れて厄落とし。
案外現実主義者な男は、神仏の奇跡やら神秘やら全く信じていないが、この妹が気になるなら全く別の話と云う現金さ。]