― グランツェルツ橋 ―
[両岸に広く隊を展開させつつ、青年自身の立ち位置は橋の上。
それは、仕掛けるタイミングを的確に測るがためのもの。
やがて、決して小さくない衝撃が伝わり──近づいて来た先頭の船が、動きを止めた。>>273]
……さすがに、警戒距離は保つ、か。
っても、それならそれで……。
[船団の距離感を計りつつ、小さく呟いて。
言いながら、ポケットから引っ張り出すのは、小さな笛。
唇に当てて、甲高い音をひとつ、鳴らす。
それは、掃射と突撃、二つの行動を促す合図。
直後に、右手の傷を薄く広げ、待機する部隊へ声を運ぶ魔術を発動させる]