[そうして、続くドロシーの言葉に、目を見開いて言葉を失った。>>257
“船にいてくれたら良かった”
――… 生まれた場所もなければ、ただこの足元しかない自分が、
思い出してはきた道を温めることが出来た、あの船。
けれど、恩を受けるばかりで何も出来ずに、離れなければならなかったことが、寂しくて仕方がなかったから。
だから、]
……ありがとう、
すごく、嬉しい。
うん、そう言ってくれるだけで、
本当に、救われるんだ。
[零れ落ちたのは、そんな、心からの本音。
ふにゃりとした笑顔は、きっと、もしかしたらこの体が壊れることがなくて、あの船にずっとい続けることもあったのかもしれないという、今となってはもう夢でしかない、過去の可能性。
船を離れて進んできた道に、出会いにも、心から感謝をしている。
けれど、それでもやはり、あの船は自分にとっては、心をくれた特別な場所だったから。]