[戦慄く唇に、手の甲をそっと宛がった。
風に散じたとも知れない城主の遺した灰を抱きに行くのは、今ではないから。
手袋越しの口接と、差し出された笑顔に思いを馳せて>>340]
[息子の手から繰り出される斧の刃が、彼の友人の肩に食い込む。
その勢いが不自然に殺がれたのに目を眇めれば、黒い鱗が垣間見えた>>231]
……ああ、……
[ただ微かに、吐息混じりの声が零れた。
懐中に潜めた男の手に銀が閃くのを見れば、扇を携える腕が僅かに跳ねる。
息子の洩らす呻きにも、それ以上はけして動かぬよう、二の腕を自ら固く抑えつけ>>247]