[それは例えば喫水の深さであったり、岸に乗り上げても構わないというような動きであったりという不自然さに気づいたからであったが、最終的には勘だといえよう。
なにかに脅かされた獣の激しさで振り向き、指示を叫ぶ。]
中央2隊、下がらせろ!
投石器!例のものをあの船に打ち込め!!
[指示を受けて撤退の鐘が鳴らされるが、勢いのついている部隊はそう早くは転進できないでいた。
未だに王府軍と切り結び続ける兵たちの上を、投石器から発射されたものが飛び越していく。
それは、かつてカナンが残し、ガートルートが壺に詰め込んだ生石灰に加えて、松脂や硫黄、硝石、可燃性の液体などを入れたものだった。
着弾すれば弾けて火を巻き散らし、しかも水が掛かっても燃え続ける恐るべき炎の壺が、岸に向けて突進してくる旗艦めがけて、次々に放たれた。]