― 農夫と林檎とかまどと ―
[ヤコブとの思い出を語るには、果物の匂い>>126が欠かせない。
山中で果樹を探しを手伝ったあと、かまどの前に陣取る彼の隣で、何ができるかとわくわく待ち焦がれたものだ。
熱中するといろいろと忘れがちなヤコブのフォローができるほど、己は賢くはないが。育ち盛りの食欲の賜物か、食べ頃の果実をたわわにつけた木を探すのは得意だったので、]
あっち!うまそうな甘い匂いがする!
[服を藪に引っ掛け、泥や木の葉をつけながらも、ヤコブの服の裾をひっぱって一緒に収穫にいそしんだものである。
そのせいか、3歳も年上であっても態度は気安い。
さすがにこの年齢になると、山の中へ冒険に出かけようという元気は出てこない。それでも、ヤコブに頼まれれば、いつでも果樹探しに馳せ参じる気持ちはある。*]