― 修道院跡/南岸 ―
[崩れかけた大盾隊は、なおも厳しい構成に晒されていた。
敵騎馬隊の波状攻撃に加え、矢の雨が彼らの頭上を襲う。
騎馬隊が来れば盾を前に押し出し、矢が降れば傾けた盾の影に隠れる。
防戦一方に追い込まれ、さらに防御の隙を突かれれば大きく食い破られる。
隊列が崩壊するのも間もなくかと思われた。
そこへ盟主の命を受けた騎馬隊80騎ほどが走りこんでいく。
大盾隊と、その南に展開する投槍隊の間を抜けるように駆けてきた彼らは列を作って敵騎馬隊とすれ違うような軌道で走り、横から矢を次々に射かけた。
追ってくるようならば馬の向きを変えて逃げるように走り、身体をひねりざまに後ろへ矢を放つ。
平原での狩りで鍛えられた騎射の技が、いかんなく発揮された。]