いえ……。
[ディーターが謝ることはないと思ったが、謝らせるようなことを言ったのは自分なので口をつぐむ。
困惑気味の顔を見れば、優しくしている自覚がないのかと思う。しかし、そこについて細かく述べていられる状況でもないだろう。
一人より二人という点で同意を得、進もうかとした所でディーターが別方向を見た。その視線の先を追うと。]
シモンとニコラス……?
[ディーターに掴まれていた手を無意識にパッと振りほどき、二人に向かって手を振る。
大声を出したら人狼が気づいて逃げてしまうかもしれない。もう少し近づいてから話を──と思った時だったか。
どこからか、「ゲルト」と呼ぶヨアヒムらしき声が聞こえた。]