― 外壁上 ―
馬鹿は余計だ。
[ 馬鹿真面目という評に、いちいちそう言い返すのも儀式めいた懐かしい「いつもの会話」だ。見つめるイェンスの表情も、かつて剣を交える度に見たのと同じ...そこから紡がれる理由に、カスパルは黙って耳を傾けた>>272]
貴族社会の柵、か。
[ イェンスが、貴族の長子だったが故の葛藤を抱えていた事そのものはなんとなく知っていた。だが、敢えてそこを突っ込んで尋ねた事は無い。
カスパルにとって、イェンスはいつしか、貴族であろうと何であろうと関わり無い、無二の存在となっていたからだ ]
不器用はお前の方だろう。
[ すまなかったと、と口にした相手に、笑みを浮かべてみせる ]
まあ、私が器用だとも言わないが。
そう見くびったものでもないぞ。これでも、聖殿に干渉してこようという貴族や、他国の王のあしらいは守護騎士の仕事でもあるんだ。
だから...
[ 言いかけて、口をつぐみ、目を伏せる ]
いや、この話の続きは...あの妖術師を片付けた後にしよう。