はは、娯楽なんて。
雪見の物好きには、ここに辿り着いたことでも充分なくらいですよ。
けれど――もし本当に退屈したら、根無し草ですから、わかりませんね?
[次の瞬間にはその冷えを感じさせもしないで、冗談めいて笑う。
羊飼いの娘はよく羊を逃がすのだろうか。焦るようでもない行商人の様子に、騒動ではないと理解はしたが。]
そうですね、うまく捕まればよいのですが。
土地勘もありませんから、捕まえたところで俺は帰ってこれなさそうだ。
娘さんの無事を祈るばかりです。
[そして、そのうちに帰ってきたパン屋の主人。
アルビンと呼ばれる行商人とのやり取りに、故郷に戻ることのあたたかさを思う。]