― 閑話休題 ―[魔王の居城であるツィーアの頂、玉座のある場所の壁に、小さなくぼみがある。ちょうど握りこぶし一つ分ほどの窪みは、もともとが何のための空間であったかはわからないが、何か置くのに具合がいい場所であり、現に小さな茶色いものが置かれていた。森の中でよく見るような団栗である。ただ、ふたつの実が根元で一つに融合してしまったような形の、珍しいものである。実の側面から小さな突起が伸びていて、全体としては急いで走っている生物に見えなくもない。]