[昔々、これも10年は前のことだ。旅の途中で通りかかった畑のチシャ《レタス》がとても美味しそうで、ちょうど喉も乾いていたしおなかも空いていたし、ひとつ味見をしてみようと失敬してかぶりついたことがあった。ひとつでいいやと思っていたけれど、気づけばふたつめにかぶりついていて、おまけに誰かが近づいて来るのも気づかずに食べていたから、後ろから声を掛けられて飛び上がったことがある。それが、チシャの兄さんだった、というわけだ。*]