ならず者 ディーター

［投票箱の中身を自分でひっくり返して、自分で集計した。
きっと、誰もがやりたくはないだろうと思ったから。

──集計を終えて、ぴたり、と手を止める。
周囲から見れば、ポカをやらかして、自分が死ぬことを確認した人狼だろうか。
だけど、顔にかかった前髪の影に隠れた表情は──。

その顔を覗き込む者がいれば、安易に確認することができただろう。
顔色は悪い。脂汗もぐっしょりかいている。
だけど、その金色の双眼も、赤毛の髭に縁取られた口元も、弓なりに歪んでいたことを。

救えたと言ってくれ。上手くいったと。
明日の心配はいらないと、そう言ってくれ。そう思わせてくれ。］