[そうして、出してもらいたくなかったものが遂に出されてしまう。>>237
感情が顔に出ないように繕うと、口元を隠していたカップを下ろして図面に目を向けた。
どうやら、書き換えた事には気づかれていない様子で、内心そっと安堵する。
アマ地方はかの国の中でも、唯一といっていい生産性のある地方だ。
しかし、はじめから収穫があったわけではない。
先人たちが荒野を切り開き、耕し、作物が育つように土地を作って来た。
ゾネス地方も地形的条件が異なるにせよ、隣接するアマ地方と同じ産業が行えるはず。
そうなっていないのは、要塞の運営と国境の守りが中心で、産業に人員を費やしていないからに他ならない。
ラメールがそれをしないのは、わざわざ痩せた土地を切り開かなくても、現時点で既に足りているからではないか]