― 3年前の冬 ―
[この日、厨房で新しいパンの試作にしていると店番を弟に任せたのが間違えだったのかもしれない。
もくもくと作業中、パパと呼ぶ声は兄弟のもので、一体全体どうしたものかと店に顔を出した。
最初、誰かわからなかったのでディーターに対して変な顔になったと思う。
しかし、続く言葉は紛れもない親しみからくる驚きが込められていることに気がつき。
赤毛で、数少ない同じ年頃の、久しぶりに会う相手、あと全く遠慮のない…それは年の近い、幼馴染み以外に該当者はおらず]
ああ、ディーか…見ないうちに男前になったな?
パパ?両親にもこのまま独身でいるんじゃないかと心配されて……あ、話が違うか。
そこで猫を被っている、ちっこいのは弟のペーターだ。
常識に考えて、私に大きな子供がいるわけないだろう?
[人形を作っているのは世間から見ても変人の分類だろうという自覚があり、年齢的にアウトだろうと言外に匂わせる。
その日から数日間、我が弟ペーターに好き嫌いを無くそうか?作戦なる深淵で華麗な計画が実行に移されることとなる。
何回目になるかは分からない兄弟間戦争はこうして始まったのだ]