[自慢話、苦労話、噂話、恋話。夜の酒場には他愛のない石ころも、磨けば輝く原石も転がっている。
>>236 ふいに、誰かの視線を感じた。同じような人種というのは嫌でも気がついてしまうものだ。広くはない店内を見渡すが、視線の主にはたどり着けず。代わりに、カウンターに腰掛ける女が長い髪から覗かせた湿布が目に止まる。]
マスター。
そちらのお嬢さんに、何か冷たいデザートを。
なあに、今日は羽振りがよくてね。
別嬪のお嬢さんにもおすそ分けさせとくれ。
[他意はなく、単なる老婆心からそう告げて。再びリュートを抱えると、人の輪の中へ戻っていった。**]