― 執務室 ―
やはり、竜を早期に仕留められなかったのが痛かったな。
[頭に浮かんだ光景を振り払い、かつての戦いの推移を脳裏になぞる。
竜を殺す機会は幾度かあったのだ。
低空飛行してきた竜の頭にたまたま投石器の石が命中して、落ちてきたことがあった。
あの時は、殺到する魔軍を一文字に切り裂いてロルフが駆けつけてきたのだった。
娘の姿でいた竜を罠にかけた時もあった。
その時も、やはりロルフが現れて救い出したのだ。
逆のこともあった。
少数の部下のみを引き連れていたロルフを斥候隊が捕捉し、近くにいた軍を動員して包囲したことがあった。
もう少しで押し潰せるというときに、竜が現れたのだ。]