[ 手慣れた様子で鋭いナイフを握った赤毛の麗人の手が動くと同時>>260男は手にしていた酒杯を、胸の前へと、掬い上げるように動かす。
カシャン、と、酒をかき混ぜるような音が鳴り、男はそのまま、乾杯の仕草で酒杯をマドラーよろしく刺さっているナイフごと眼前に掲げた。 ]
ギデオン・エルギーノス殿下の御息災を祝して。
[ そのまま、鉄の味のする酒を、一息に飲み干す。冷たく冴えた青灰の瞳の中には、何の感情も浮かんではいなかったが、丁寧な一礼は、まぎれもなく、己に刃を放った男への敬意を表していた。** ]