―氷の橋、公国側―
[吹きすさぶ吹雪を潜り抜け、力強い蹄が公国側の大地を踏む。
髪の先を凍らせながら、ふるりと頭を振り、男は覆面を引き下げて声を上げる]
――作戦成功、此の侭、後方隊に合流する。
対象の保全を優先。
[橋向こうで敵兵を相手にしていた同部隊の傭兵が、次々に了解の声を上げた。
兵たちは、あるものは交戦しつつ、あるものは腰に下げていた残りの白煙弾をいくつか放り投げ――魔器により直ぐに蹴散らされてしまうであろう故、恐らくは足止め程度にしかならないだろうが――やがて、いくらかの人数が一隊へと合流した。
部隊の人数は、多少減っている。負傷している者もいたが、まずはここから離れることが先決だった]
負傷者は真ん中に進め。
……本隊は交戦中か。あちらに助力を求めるわけにもいかんな。