[斃れ伏したその女の亡骸からは、命の名残の赤がとめどなく流れだしていた。
女の頬に残るそれは、涙と呼ばれるものだったろうか。>>250
その目は閉じられている。
傷口に、牙を――…
――…
ぎしり、と、軋むような痛みに。
女の身体に触れることはなく、私は立ち上がる。
動くもののない通路には、星のあかりすらない闇のみが、窓の向こうに揺らめく。
“生き残る”
“たとえだれが”
“一人でも”
幾度目になるだろう、私は、戒めのようにお前に向けて呟く。
水のある場所は、知っている。
手の血の跡を洗い流し、駆けまわる者たちの足音をはるか遠くに聞きながら。]