………………。[思わず口元を押さえたのは、嫌な予感がこみ上げたから]にゃ、にゃー。[試しに押し出した声は、完全に猫の鳴き声のそれである。泉の辺のカエルがぴょこんと跳ね上がり、霧の向こうに姿を消すまでの数分間、珍妙な顔で硬直した。辺りを漂う白い霧には、奇妙な魔力が篭っていると、わかっている筈だった。でもまさか、こんな効果が現れようとは思わなかった。……言葉でもって相手を弄ぶシメオンからすると、これは由々しき事態である。魔性の者としてあるまじき間抜けな状況に、頬を冷や汗が伝う]