[けれど。
もし“人柱”が必要だとしたら、
それは、銀羊の乗員乗客の誰であっても、金馬号の誰かであっても、いけないんだ。
この情報交換で手がかりが浮かび上がるならいい。
あるいは、何かの状況の変化があって、人狼が見つかるようなら、いい。
けれど、この先、状況が膠着して、手詰まりになるような局面があるならば――…
そのときは、いつでも。
無論むざむざ殺されるつもりはない、死にたいわけでは、ないのだから。
ただ殺されてしまうようでは、手がかりにならない。
戦って、生き残る。
あるいはせめて何かあとに残るものを残す。
“人狼”相手に、果たしてそのようなことが可能であるかは、
あまりにも見通しが、甘すぎるのかもしれない。
あるいは、この体が人狼と見なされる、
そんな結末だって、大いに有るのだ。
けれど、必要なときがきたら、その役割は。
――… そんなひとつの決意が、静かに形を取ってゆく。]