― 戦艦シュヴァルベ ―
「敵艦隊、距離3000、依然方位変わらず…いえ、転進しました!方位2-4-0」
[ 男は戦艦シュヴァルベの艦橋で、じっとまだ距離のある帝国の第二艦隊を見つめていた ]
反航と見せかけて頭を塞ぎに来たか、さすがだな、扶翼官殿。
[ ここを押さえに来るのが、ルートヴィヒであろうことは、すでに確信している。ゲオルグもまた、それ以外はないだろう、と、男の予測に同意していた。
やはり、うかうかと挑発的な攻撃陣形に釣られて、向こうから飛び込んで来てくれる程、甘い男ではない…だが、それでこそ、だ。
ルートヴィヒが宣戦布告に現れたあの時、冴えた月のような秀麗な面に稲妻の裂光を閃かせた瞬間の、切り裂くような気配を思い出して男はどこか楽しげに目を細めた ]