ジャケットにウサギの毛、ついてんぞ。[一応は士官学校であれば、身だしなみに煩い教官もある。動物の毛がついているなど望ましくないというわけだが、この場合は多分に彼へのからかいをも含んでいた。わざわざと指をさして、柔らかな毛の存在を指摘してやる。猫にウサギに、ここは動物好きの者らが多い。級友へ、にやりと笑ってくるりと前に向き直った。トールと争うこのクラスメイトを、ディークは嫌いではない。面白い男だと眺めながらも、ただ、軽く腹を探り合うことも多いのは立場と都合というものだろう]