いい加減にしてください、兄上。
今はそんなことを考えている場合ではないでしょう。
国の危機なのですよ?
家名だろうが、兄上の名だろうが、そんなものに拘っている場合ではありません。
そんなにやりたければ、お身体を治し、ご自身で行ってください。
私は、
護りたいものが、ありますから。
[睨む兄の鋭い視線に負けぬよう、私も射返して言葉を紡ぐ。
もう兄の傀儡で居るのは嫌だ。
私は”私”なのだから。
もし昏睡した時の夢を覚えていれば、対応ももう少し変わっていたのかもしれない。
けれど、あの夢は全て靄の奥へと消えてしまったから───]