[ 本当に何もなかった?と尋ねる顔には
一瞬眉間西班を寄せて、考える。
そして続く、小さなつぶやきにも。
彼女の心の裡は知らない。
ただ奇しくも似たようなことを思う
王の死ひとつでここまでの混乱を生んだ
暁の国は本当に平和だったのだろうか、と]
……あなたがその言葉に含ませた本質は
あたしには、わからないけれど。
だけど、
「何もない」ことは無いはずよ。
現に、貧富の差だってある
平民と貴族の身分差別だってある
きっと、軍部と文官との不和もある
そして暁の国の繁栄の影に、
衰退してしまった国も有るでしょう
[ 彼女の国がそうであるとは知らない ]