― 里帰り ―
[『神魔の領域』を抜けた後。
神殿へ戻る道ではなく、少し遠回りをして、故郷へ向かう道を辿る。
ごく普通の外套を着込み、天命石も隠しておけば、顔だけで巫女と見抜ける者はそう多くないはずだ]
こっちですよ。
[ローランドと共に行く時、いつも先導するのは彼の方だったが、この時ばかりはリュカの方が先に立った。
山間の細い道を抜けた先、僅かばかりの農地を囲んで民家が立ち並ぶ、小さな村へ辿り着いた。
農作業中の一人が顔を上げ、この地には珍しい旅人の顔を見た後目を円くする]
『あっ……おめぇ、まさか――』
『リュカ!? お前、家出したっきり戻って来なかったって……』
[そこからは小さな村中に報せが行き渡るまであっという間だった。
慌てて飛び出してきたのは記憶より老いた両親で、真っ先にリュカに駆け寄りその身を抱き締めた]