― 外壁上 ―
[ 最初から、イェンスとは環境も生活も性格も、揮う剣の型さえも、悉くが違っていた。重なり合う事の無い、けれど、だからこそ、視線を離すことの出来ない存在...それが彼だった ]
っ、無茶をっ...!
[ 左手でレイピアの軌道を遮ろうとする動きに、思い切り顔を顰めながら、しかし、一度ついた勢いは止まらず、辛うじて、真っすぐに貫く動きを下方へ斬り降ろすような動きに変えて、相手の手の甲に裂傷を残すに留める ]
くあっ!
[ だが、同時に、下方から振り上げられた大剣が、斬り下ろしたレイピアを持つ右手を跳ね上げ、思わず緩んだ手からレイピアが宙に飛んだ ]
くそっ!
[ しかし、これで終わりにはしない、とばかりに、カスパルは無手のまま、イェンスに体当たりをして組み付いた ]
お前、には...!
[ 負けない、と、言う前に、声を呑み込む、その苦しげな表情は、イェンスも始めて見るものだったろう* ]