― 時は遡って一月半 ―
[その時は夜明け近い時間帯だったのだろう。
父と息子が二人で見晴台で空を見上げ、二つ輝く暁の星を眺めていた。
近々に隣国の視察に行くという報告を父にすれば、珍しく「一緒に星を見ないか」と誘われ、共に見晴台までやって来たのだ。
自分と父と二人っきりで親子の会話をするの何時方振りか。
されど、父子との会話は固く親しみの薄いものであり距離を感じさせる得ない。]
父上、何故此処に私を誘ったのでしょうか?
[ごく自然な疑問を投げ掛け父に問う。
二つ並んで輝く星を眺めながら返ってくる答えは、時期に後継者発表を告示する、というもの。
周囲には薄っすらと次期国王候補の話が出ているのは耳にしていたが、実際父からその話を持ち出されれば驚きを隠せられなかった。
その理由は人の上に立つ大事さ恐ろしさを早めに学ばせようとしてるとしている事。
父が健在である内ならば、王太子が失敗してもフォローは出来る事を踏まえたうえでの考えだと聞けば恭しく頭を垂れさせ感謝の言葉を継げる。]
私達兄弟に厚い顧慮を頂き有り難き幸せで御座います。
[ピシっとした動きで腰を曲げ頭を下げ、すぐにもとの体勢へと戻し父の話に耳を傾ける。]