―戦場の前―
そうか…… 貴女は、強い人だ。
[>>236 ヴィクトリアの言葉に唇を噛む。
僅かに口内に鉄の味が広がり、喉元を落ちる。]
僕は、
[目を凝らす。
この視界に広がる何処かの海に、姉が居るなんて。
見えもしないのに、思わず単眼鏡を掴み、海を睨みつける。]
避けられるならば、避けて欲しい。
―――……姉さんの居る船を、この手で沈めたくないよ。
[それは無理だ、とヴィクトリアは言っただろうか。
ウェルシュも理屈では分かるのだ。
たった一人の私情のために、 乗組員全員を危険に曝すわけにはいかないのだ。
然し、感情がそれを許さない。]