[西側方面では成果はなかった。こちら側は特に危険な場所はない筈。先程のユーリエの、白い肌を侵食するような痣を思い出し、掌に嫌な汗を掻く。もう戻っている音いいのだけど、と来た道を逆に戻り、…宿泊所を過ごして、展望台の方へ足を伸ばした。]
[墓碑の様に崖端に尖り立つ、展望台へ向かう緩慢な階段を上がる途中、踏み込んだ瞬間に、元より罅のあったタイルが割れて滑り、重心が崩れた。咄嗟に手をついたが、掌に小さな石が食い込んで小さな苦痛の声を漏らす。顔を上げるが、当然そこも無人だった。立ち上がり、引き返そうとして、]
…………
[全くの人工灯のない環境で、冴え冴えと恐ろしいほど空は済み、星を瞬かせていた。空の紺と海の紺の境は溶けて、こんな事態であるのに、その美しさにゾフィヤは足を留めた。]