―或る呪われ者の追想―
その指輪こそが陰惨な歴史の始まりでもあった。
術者の指輪は身に着けるものに呪いがいくように見事な術式が施されていた。
――丁寧なことに。領主として祭り上げられた彼に『継ぐ者』へ呪いは蔓延していく。
領主は次々と非業の死を遂げる中。領民の変死は激減した。
領主とは名ばかりの人身御供となりつつあったのが何代続いたか正確にはわからない。
領主を継いだその日に死に瀕した者も居るらしい。
クレステッド。否――ウィルフレッドの先天的呪術体制は主国にとっては暁光であっただろう。
事実、そのためにウィルフレッドは育てられた。(>>2:158)
見出された資質は本当だったのだろう。歴代領主とは違い、ウィルフレッドは呪詛により死ななかった。就いてから肉体の時が止まり永い永い時領主の座に就き自由領を安定させ、養父から授けられた名すら捨て。
多くの者に置き去りにされて、なお。恵まれていると、感じられる。