[また1つグラスを手に取ると、口を付けながら辺りを見回した。何度か店で見たことがあるような顔ぶれもあった。しばらくすると、領主が入って来て男性と話し始めた。>>252男性の名前だの、二人の関係性だのを仕入れるよう、話に耳を傾けた。ふいに花の香りを感じ、振り返れば一輪の薔薇の花――のように美しく、少し棘のある女性が立っていて、領主に挨拶をする姿を傍らから見詰めた。>>255目が合えば軽く会釈くらいしただろう。]