―或る呪われ者の追想―
自分はとても恵まれていると領主たる男は感じている。
もうすぐ――領主でなくなるが故に、噛み締める。
永久的な平和の影には、闇が潜んでいるものだ。
永世なる中立国、脅威の軍隊がいるように。
この小国の平和は、現代社会には似つかわしくない、魔術式方法で他国からの武力行使や各国への圧力を除外させてきた。
主国の平和維持のために、作られた金字塔。
呪い《まじない》による瘴気の呪い《のろい》
それを集約しているのは、ある鉱脈であった。
金字塔はこの鉱脈の鉱石をふんだんに使われているため、繋がりやすく、その場所を起点として呪詛を施すことで、首都への弊害を防ごうというものであった。
どれほど以前から行われているかは知らない。
見兼ねたひとりの術者が、一身に呪いを受けると申し出た。術者おそらく、浄化の自身があったのだろう。
結果として術者は早死にした。――媒介となった、黒い宝石の指輪を残して。(>>0:219)