― 開戦前 シュヴァルベ ―
[講演の仕事が終われば、再び馴染みの家や店に顔を出す。
ラムスドルフ家、いつも廃棄品を分けてくれていたパン屋さん、それから、下宿の女主人をやっている――]
[いつものように、菓子折りに仕込んだレポート。
それから、世間話をいろいろと……。知らなくていいことをこの上司は教えなかった。自分預かりとはいえ、毛が生えた程度の素人を使っている自覚があるのだから]
『いつも安月給で頑張っているのネェ。貴方、何か欲しいものは無いノ?』
私に好きなだけ研究させてくれるパトロンと、それから私の作ったモノを使ってくれる人、かな。
『ソウ。今は帝国でよろしくやっているケレド、今公国で、今以上の職権が与えられたら、貴方何をするノ?』
――先ず、私の親の遺品を奪った奴からそれを回収する。
『アラ怖い』
[公国出身であり、かつ出自まではっきりする唯一の――親の遺品を持つ、男は口元に手をあてて野太く笑う]