―メイン・サロンに向かう途中―
[兄のことを過去形で語った意味に、
ローも気づいたとは知り得る由もないものの。>>181]
あ、すみません。大丈夫ですよ。
俺の……兄のことでした、から。
[ローの肌の色の理由に、なるほどと頷いてから。
“少し怖い”という感想に、
一瞬の躊躇いの後、安心してほしくて兄の事だと正直に口にし、
兄の肌の色の理由>>144を、説明した。
誰にだって、兄くらいはいるだろう。
身分の手がかりにはならないだろう、と。
この時は、ローがまさか
“わたし”のことに気づいてくれるとは、思ってもみず。
過去形で語られる兄の話を、
彼がどう考えるかなど考慮できぬまま。]