― 上空・竜の背 ―
[竜が舞い上がり、高度が安定した頃]
索敵範囲を広げますわね。
派手な術ではない故、気付かれることはないかと思いますが――。
[一応の了解を得るためそう言葉にした後、集中のため僅かな時間眼を閉じる]
―― 浮かべ ――
[詠唱と同時、水面に波紋が広がるが如く、自身の感覚が急激に広がっていくのが感じられた。
精霊のざわめきがあるなら、波紋が乱れ、それは肌に触れる水の揺らぎのように自分自身へと跳ね返る。
だが幸い、今は漣の一つも感じられぬほど穏やかだ]
まだ、目立った反応はないようです。
[薄く眼を開けると、遠くに木々の群れが暗い影として見えていた。
"触覚"に意識を割いている分、瞳に映るその光景は、普段より曖昧に感じられた]