[キアラが受け止めてくれたことも勿論だけど、キアラに話せたこと自体自分にとって大きな一歩だと思う。
いつか、下の兄が新しい部下だと言って連れてきた青年の言葉を思い出す。
元々は民間人で、偶然『力』に目覚めた事が切欠で軍に入ったというその人が、平穏に暮らせるはずだったのに自ら軍に飛び込んだという理由。
『知ったことに目ぇ瞑って、自分に出来ることを何もせんなんて出来んかったし』
『一人だと突っ走って無理するヤツも居てあぶなっかしいから、放っとけん』
『まぁ、要は自分に出来ることを全力でする為に、ここまで来たんよ』
屈託ない笑顔で、そう言い切るその人が羨ましかった。
自分の意思で前に進んでいるつもりだったけれど、胸の片隅で足踏みを続けていたから。
彼のように前を向く強さが、誰かの為に全力を費やすと言い切れる強さが───その欠片を手に入れた気がして、嬉しかった]