― 回想:第2エリア通路 ソマリと ―
……ばかね、ソマリは。
[自分ではコントロールできない涙をそのままに、くしゃりと笑う。
涙が出るならば、人の心をもつれっきとした人間だと言われ、どれほど嬉しかっただろう。
生き残ったのは自分だけだと聞かされたとき。
脳内にガルーの感染した脳が入っていると知ったとき。
肉体が、変形したとき。
私は一つずつ"人間"を失いつつあるのだと、どこかで諦め、それを当然だと思っていた。
彼を、ソマリを、信用していないわけがない。
信用していなければそもそも、どんなにせっつかれたとしても、話したりなどしない。]
……ほんと、ばか。
……でも、……ありがと。
[目元を和らげてそんな冗談を言ってくる彼>>123 には特に否定を返さない。
そう思ってればいいんだ。
日頃から優しい癖に、それ以上どう接するのか、今後見物だと思う。
それはちょっとした趣向返しと甘えに、似た何か。
『今後』……そんな不確かなものが、あるのだと信じたくて。
髪を撫でてくれる優しい手を享受しながら、どうか、どうか、とささやかな願いを込める。]