あのさ。今日からディーンのこと、
にいさんって呼んでいいかな。
[そう尋ねたのは出会いから何日か後のことだ。
その頃にはディーンはぽつぽつと話をしてくれるようにも、共に遊ぶようにもなっていた。ディーンの習得力は大人たちも驚くほどで、あっという間に一族に馴染んだ。草原を駆け森へ出かけ、時に流れる雲を何時間でも見上げ、同じ時間を過ごした。
彼の仏頂面は単に寡黙な性質なのだと思っていたが、そうではなくて、何かが彼をそうさせていたのだと朧げに気づき始めたのもこの頃。
けれど彼の過去については、エドルファスは自ら問うことはなかった。
触れられたくないもの、秘密にしていたいことは誰しもにある。
秘密の共有の代わりに、より遊びに連れ出したし、より多くを話したし、より強い絆を求めたのだった。]