[然し、彼の巫女姫が巫女の領分を越える、王の様な姿も不安だった]
然し結末はどうあれ、姫殿下には御退場願うつもりだった。
…神殿にと云う意味だ。
元々巫女の領分を越え、姫王の様な為政者として振舞う巫女姫には思う所が存在した。
彼女の清廉潔白な慈愛の心、決して理想のみではない志はともかく。
高々二十の娘が、我ら貴族諸侯の頂点に果たして立ちきれるか疑問でな。
[巫女姫の王としての能力を、詰まりは見極めあぐねていたのだ。
この先、彼の巫女姫が人々を纏め導くならば旧態然とした制度では不足。
いっその事、姫殿下には本当に御親政復帰し、第二代姫王として王国の支柱と君臨して貰う方が未来は明るい。
だが年若い巫女姫が、官僚貴族と民衆の板挟みを華麗に捌き、民を未来へ導く程の能力を本当に備えているか。その能力が不足していれば逆に王国は混迷する。
そして当然ながら、姫王の君臨は、男の利権にもまた阻害として塞がるのだ。
ならばと男はひとつの落とし所を考えていた。
不安ならばこの戦乱を気に、巫女姫を政から弾き出し、巫女としての使命のみを全うさせるべきだと]