― 回想 ―
[彼女を最初に認識したのは、もう6年も前になるか。
当時ゲオルグは既に階級も上がり、傭兵隊を率いるよりもウルケル海軍を取り纏めるため、ウルケル領内に留まっていることも多くなり始めていた。
その頃に、ごく近海にて行われた作戦があった。
ありふれた領海争いに端を発する、傭兵業務だ。
当時、海に出たくてたまらなくなっていた男が職権を利用して指揮をもぎ取り、出撃した戦いで士官としての彼女をはじめて認識した。]
いい腕だったな。
[戦いは乱戦となり、小さな海域には敵味方が入り乱れた。
動きの難しい中にあって、際立った動きを見せた艦がある。
それが彼女の操舵していた艦だった。
大胆に、縦横に艦を操り敵艦を翻弄したその操船の腕に、男は素直に賞賛を送った。
その戦いは幾らかの損害を出しながらも勝利を収め、以後、スキュレステノの名は男の記憶の一部に刻まれることになる。]