[そんなある日。
いつもの如く兄達に嫌味を言われ、虚しい気分で窓辺に佇んでいると、目の覚めるような美しい白金の髪をした少年が自分の側で立ち止まった。
―誰だろう。
彼が件の少年だとは咄嗟に分からず、昴と彼を見つめる翡翠の瞳に光はなかっただろう。
あの時の自分は、新しく出来た‘家族’から向けられる歪んだ感情と上手く付き合う方法を知らなかった。
けれど、自分に向かって一礼する彼のさらりと流れる髪に思わず目を奪われ。
端正な顔立ちに浮かべられた柔らかな笑顔を見てはたと我に返り、ようやく身体に馴染み始めた貴族流の挨拶を返した。]