―― 医務室前 ――
[壁に凭れ、ポケットを探れば、二枚のカードに指が触れる。>>239
今時、紙媒体に連絡先を書いて人に渡す者も珍しい。
それも、二日連続で。
考えてみれば、昨日のあいつは船医だったようだから――この時点で、認識をホストから女たらしの医者に修正――ダーフィトとは知り合いなのかもしれない。
異なるようでいて、音に似たところがある二人は、思い返してみれば共通点も多々思い浮かぶ。
軽妙な話口調とか。
先程すれ違いざまに微かに香った、種類は違うようだが、喫煙者特有の香りだとか。
気になるようなものではないが、視覚以外の感覚が少々鋭いため、普通なら気にならない程度の香りに気づいてはいた。
ああ、もし知人友人なら。
ダーフィトは体調不良ではなく、茶飲み話で此処を訪れたという可能性もあるか。
そちらの方なら、いいのだけれど。]