>>254
[構わないと答えてくれたその声は、予想していたよりもやわらかく聞こえたので、安心して席に着く。
本の題名も教えてくれた]
……笑わない。
[少しだけ、声が震えた。読んだことならあった]
大好き。そのひとの他の本も読んで、それはもう少し大人向けだったけど……空を知っているひとの小説だな、って。
きれいなだけじゃなくて、厳しかったり、あまりに大きかったり、深かったり、色々な。
[たいせつなものは目には見えない、という言葉が有名だろう。
王子様が訪れる、一つ一つの星の住人とのやりとりに感じ入るものもある。けれど、殊更に印象に残っているのは]
きつねと、薔薇。言葉をかわして、特別な、そのひとにとって他のきつねとは違うともだちのきつねになる。
世話をして、たいせつにして、別れ際には喧嘩もして――バラ園に咲き誇るどんな薔薇よりも大切な、かけがえのない一輪の薔薇になる。そのたいせつさに気付くには、少し遠回りをしたけれど。
友達がどこかの星で笑っているなら、空の星はみんな、笑ってるように見える。