― 疾走する馬車の中 ―
[先程までの凶器にも似た、死への渇望は不意に途絶えた。
意識を周りに向ければ、自分がどこかへ運ばれていると知る――どこへ?
と、かけられた声>>253にやっと開くことができるようになった視線を向けた。
――曰く、血を貰いたいと。
思い出されるのは自らが死んだ時。周りの親しい者達が次々と命奪われていく時。
思い切り警戒の色を出していたら、違うとの説明はある>>254が――正直訳が分からない。この男は何を言っているのだろう。眷族?評議会?まるで自分が何かを知っているのが当たり前であるかのような態度]
―…。
[口を開こうとすると、唇はなんとか動くけれども声を出すほどの力はまだない。
――好きにすればいい。
そんな形に動いたのを彼は気付くだろうか。
自分の周りで何が起こっているのかまったく理解できないが、彼がどうやら普通の“人”ではないこと、彼がその気になれば自分の意思など必要がないであろうことは理解できる。ならば勝手にすればいいと思うのは、死の記憶が鮮明すぎて自棄になった気分も手伝って]