― 遠い記憶 ―[兄とも仰ぐその人との出会いは、随分と前に遡る。 珍しく風の凪いだ日の午後のことだ。 集落の家々の間に見慣れぬひとの姿を見つけて、 頭に葉っぱをくっ付けたまま、首を傾げた。] (誰だろう?) [近くに居た大人の裾を引き、あれは誰かと聞けば、 訳あって一緒に生活することになった旅人たちだという。 旅人や客人が留まるのは珍しいことではなかったが、 とりわけ興味を引かれたのは、そのうちの一人がまだ年若い男の子であったからだろう。]