― 十数年前 ―
[時々蛇行しながら部屋に向かいつつ、男の頭には茶会の発起人であるソマーリュの顔が浮かんでいた。
彼と自分とは、この城に入る以前に出会っている。
十数年前、自分が父と共に暮らす事になって数年程経ってからの事か。
>>212父と親交のある貴族が見初め、仕込んだ少年の話を聞かされた。
自分とそう年も変わらぬ彼の舞踊を、父は素晴らしいものだったと褒めちぎった。]
「フェリクス。今度お前にも見せてやりたいよ。」
―いえ、僕は…。
[話を聞いて興味は引かれたが、兄達も見せて貰っていないのに特別な配慮をして貰う訳にはいかない。
苦笑して首を振る自分の意図を組んで、父は哀しそうに笑いながらそっと頭を撫でてくれた。]