― 心臓 ―
[目前の王子は言を聞いているのかいないのか、薄く片方のみ口角が引き上がった気がし。
仄かな苛立ちが募る。一体、自分達をどうしたい心算なのかと。]
……どうなろうが既にこの城は我々、吸血種のものだ。
――貴様の手の上で遊んでやる気は、更々無い。
[右腕を、持ち上げ爪を最大まで引き伸ばす。
男の浅墓な行動を制止する声はあっただろうか。
解らずも、酷薄なその薄笑みが癪に障り――
王子の左胸へ指先を突き立て着衣を破き、皮膚を突き抜け肋骨をへし折り、そして、]
[肉を抉るくぐもった水音が、界隈へ響く――…]