先代アルムグレーン鉱業社長の養女(とは名ばかりで、実際には情婦だったのは周囲の誰もが知るところである)となり。
その先代社長と正妻、実子がまとめて「事故死」したことで社を受け継ぎ。
その後、豪腕辣腕により社を先代の倍以上の規模に成長させた手腕は、裏社会を知る者なら誰でも耳にしたことがあるだろう。
とはいえ、彼女が持ちうるのはあくまでも、どこまで行っても――
現実的な「権力」「財力」「暴力」の範疇だ。
年齢不詳を公称しているが、実のところ外見とそう大差はない。
世の女性が必死に努力するのと同程度の情熱をもって、アンチエイジングに勤しんではいるが、不老の話に一も二もなく飛びつくほどに切羽詰まっているわけではない。
彼女が他者と違う点があるとすれば、ただ二つ。
「悪人の資質」に人より長け、そして「悪人の才覚」はそれよりなお長けていた。
ただ、それだけのことだ。